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『てのひらの赤ちゃん』を読んだ感想・レビュー。超低出生体重児の記録

手のひらの赤ちゃん 妊娠・出産

芸人・高山トモヒロさんの『手のひらの赤ちゃん』という本を読みました。

私は複数回の初期流産経験があるので、今回妊娠が分かったときも最初から「妊娠=確実で安全な出産」という意識はありませんでした。むしろ、次の検診の日を指折り数え、1日1日が無事に過ぎていくことに安堵する日々。流産のリスクが低くなる週数になっても、今度は早産が心配に。そんな妊娠期間を過ごしているので、早産で生まれた他の赤ちゃんたちのことも自然と気になるように。

そこで手に取ったのが、レビューも高かったこの本です。

手のひらの赤ちゃん – 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録 – (ヨシモトブックス)
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妊娠22週3日目に325グラムで生まれた赤ちゃんの記録

「この世に、この時代に、この私たちの間に生まれてきた赤ちゃんの闘い続ける姿を記録に残してあげたい」。超低出生体重児で生まれた奈乃羽(なのは)ちゃんのご両親から、芸人・高山トモヒロさんがそう託され、奈乃羽ちゃんとその家族、NICUで出会った2組の赤ちゃんとその家族のことを記録した作品です。

奈乃羽ちゃんのご両親である佑里子さんと敏哉さんは、数年間の不妊治療を経て奈乃羽ちゃんを授かったそう。まさに念願の子宝ですよね。ほとんどの家族がそうであるように、幸せな未来を思い描いていたはず。それなのに、21週4日目で突然の破水。

21週6日までは流産となり、22週からは早産になるので救命措置をしてもらえる。だから、本当にぎりぎりのところです。そして、何とかあと数日持ちこたえてほしいという両親の願いに応え、奈乃羽ちゃんはほんの少ししか羊水が残っていない中で1週間お腹にとどまってくれました。

ですが、出生体重は平均の約9分の1。ここからまだまだ試練が続きます。胎児の肺機能が発達して自発呼吸する準備ができるのが妊娠34~35週。奈乃羽ちゃんは管から酸素を送り込んでいる状態で、生存率は30%と告げられたそうです。

そして、生まれて数日後には腸が破れて手術。さらには、肝機能障害、感染症、未熟児網膜症。たった数百グラムしかない赤ちゃんが経験するには辛すぎる試練の連続です。

小さい身体に管をいっぱいにつけながらも懸命に生きようと頑張る奈乃羽ちゃんの様子、そんな奈乃羽ちゃんを全力で愛して支えるご両親の様子に、涙なくしては読めませんでした。

NICUの赤ちゃんとその家族

この本では、佑里子さん・敏哉さんご夫婦がNICUで出会った2家族のことも描かれています。

小脳が通常の3分の1しかない状態で生まれてきた遥くん。生まれた時から、自力呼吸ができず、目も見えない・耳も聞こえなかったそうです。そして、自分の意思で動くことはできないのに、痛みだけは感じてる。

そんな中で、ご両親は遥くんの呼吸器を外すか否かの選択を迫られます。呼吸器を外すというのは、つまり我が子を空に送るということ。ご両親にとってどれほど辛い決断か…想像しただけでも胸が張り裂けそうです。

そして、もう1組。長年の不妊治療の末に双子を授かったご夫婦。23週4日目で出産されたそう。真一くんは585グラム、果穂ちゃんは550グラム。

真一くんが少しずつ成長の兆しを見せる一方で、果穂ちゃんは脳と肺から出血があり、生まれて4日目にして初めての手術。それから数回の手術を経て、一進一退を繰り返しながら、1,500グラムを超えるまでに成長しました。

それなのに果穂ちゃんは、頭に埋め込んでいるリザーバーから感染症にかかってしまい…。

どちらのご家族のお話もあまりに壮絶です。

NICUでの戦いの現実を思い知らされたと同時に、子どもを思うご両親の気持ちに心がぎゅっと絞られるような思いでした。

無事に生まれてきてくれるのが当たり前ではない

超低出生体重児の話と言うだけで涙なしでは読めないだろうなとは思っていましたが、予想以上で、途中からはずっと泣きながら読んでいる状態。一気に読み終えてしまいました。

そして、読んだ後に思ったのは、月並みですが、無事に生まれて健康に成長できるのが当たり前ではないということ。

私も20代で初めて流産するまで、妊娠したら何の問題もない妊娠期間を経て健康な赤ちゃんが生まれてくるのが当たり前だと思っていました。流産する人がいることはもちろん知っていましたが、自分がそうなるとは夢にも思っていなかったんですよね。早産やその他の出産後のトラブルもそれと同じ。ここに出てくる赤ちゃんは自分の赤ちゃんだったかもしれない。ここに出てくるご両親は自分たちだったかもしれない。

「なぜ、奈乃羽のことを本にしたいと思ったのかと言うと、世の中で起きる子どもへの虐待や殺人をひとつでもなくしたいからなんです。赤ちゃんが十月十日で五体満足に生まれてくる奇跡を大事にして、未来しかない子どもたちを守りたいんです」

というのは、奈乃羽ちゃんのお父さんである敏哉さんの言葉です。今ここに命があるということ。それは間違いなく奇跡で、何があってもその奇跡を大切にしなければならないと改めて強く思いました。

本の最後は、NICUで出会った3家族が再会を果たした場面で締めくくられていましたが、皆さんの前向きな姿勢にも心打たれるものがありました。命という重いテーマを扱いながら暗い読後感が残らなかったのは、それがあるからかな。その場面で奈乃羽ちゃんのお母さんの佑里子さんが不妊治療を再開されることを報告していました。ご夫婦がまた奇跡の存在である我が子に出会うことができますようにと願っています。

手のひらの赤ちゃん – 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録 – (ヨシモトブックス)

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